オンライン教育と子供の創造性
*こちらの記事は以前、冨田の個人ブログに掲載したものに追記・編集したもので、フェスティバルに関する情報は2018年当時のものとなります。
この一年間色んな出会いがある中で、「宇宙とロボットLabo.」のイベント、ワークショップを上海にて開催できる機会に恵まれました。それは上海サイエンスフェスティバルです。
上海サイエンスフェスティバルは科学技術の教育領域で世界最大級となる上海市肝入りのイベント(スポンサー規模世界2位)で、開催期間中は科学技術館をはじめとして、上海市全土で科学技術教育に関するワークショップや各種イベントが行われ、この期間は企業や教育機関のラボなども一般公開されます。 今年(2018年)は5/19-26の期間で開催されました。
上海市科学技術委員会は山崎直子宇宙飛行士をキーノートスピーカーとして招聘し、私たちもメイン会場である上海科技館にて、パートナー企業である仰望星空と一緒に星空や宇宙飛行士訓練をテーマにしたイベント・ワークショップを行いました。幸いにも私たちのイベントはフェスティバルの目玉となり、約1週間の開催期間で10,000名を超える方々にご来場、ご体験いただきました。
*仰望星空: http://www.yangwangxingkong.cn/ 星空をテーマにした自然科学教育のスタートアップ
また山崎直子宇宙飛行士の公演は上海科技館の会場でだけでなく、インターネットを通じて多くの方にご参加いただきました。講演終了後の速報値だけでも約60万PVと、山崎さんの知名度・講演内容の素晴らしさはもちろんのこと、中国においてオンライン教育がいかに身近であることを知る機会ともなりました。
現在、有人宇宙船を所持しているのはアメリカ、ロシア、中国の3国です。中でも中国は宇宙飛行士訓練の全てを自国で行うことができます。宇宙開発における民間活用でも、その存在感・勢いは増すばかりです。国としても科学技術教育に非常に力を入れており、人材開発の民間プレーヤーも国内外から多く参入し、激しい競争が繰り広げられています。 特にEdTech市場は急速な成長を遂げてきました。
そこにコロナが発生し、先進国を相手にする中国の消費財製造業は大きな打撃を受けることが予想され、それが個人消費にも影響することが推測されます。そういった流れの中でいくつものユニコーン企業を抱える中国のEdTech市場でも、淘汰が予想されます。どんな企業のどんなコンテンツが生き残り、再び成長していくのか、注視の時です。
日本でもオンライン教育が急速に進んでいます。子供向けのものから、企業研修までありとあらゆるものがオンラインで提供され始めています。例えば小学生を対象にしたオンラインのコンテンツはたくさんあり、創造力や問題解決力を得られる力として謳っているものもあります。中にはデザイン、ストーリー、世界観など驚くようなものもあり子供たちも夢中になって行っています。
一方で「オンライン疲れ」のようなことも起こっていると感じています。それぞれのコンテンツで用意されている環境に慣れ、飽きてしまうようなイメージです。
そんな折、企業の新事業提案の研修でご一緒している人材開発会社の社長が、子供の創造性を育む新規事業を提案したチームにこうフィードバックしました。「創造性を育むと言いながら、サービス提供者の用意した環境ばっかりだね。創造性とは何にもないところから生まれるんじゃないの?」
大ブームの任天堂スイッチ「あつまれ どうぶつの森」のキャッチコピーも”何もないから、なんでもできる”です。
もちろん創造性に関して色んな定義や取り組みがあって良いと思います。実際、制約があるから新しいものが生まれています。ただ、どんな定義や取り組みでも「何もないところから考える」ということは、とても重要なことではと感じています。
皆さんにとって、子供にとって、何もないところってどんなところですか?
文:冨田晋作